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改装しました。 前途は相変わらず謎というか闇というか。
Posted by - 2024.09.28,Sat
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Posted by luneark. - 2011.07.20,Wed
問題のビデオテープが日の目を見てから大よそ半年後の事である


「…昨日は…そうだな。初めて親子三人でええと…何の字だったかな?」
「川の字ですよ貴方」
「河?ああ、川か。なるほど」
「とはいえ、どちらかというと川というより中ですわね♪」
「確かに、一人だけ大きいとそうなるな」
「どんなに手足を広げてもはみ出る気配も無い布団というのは、中々新鮮でした」

テーブルを囲み各々緑茶や紅茶を煽り、これまたテーブルの上に並べられた
クッキーやスコーン、お煎餅を各々が好きなペースで飲み物と共に楽しんでいた

「……さて、アルマ、今日はもうひとつ重要な話がある」
「はいお父様。あのテープの件以上ですか?いえどちらにしてもお伺いしますが」
「ある意味では重いね。何せ…私はアルマ、お前を殺そうとして実際に手を下したのだから」

紅茶のカップを手にしたまま父が紡いだ言葉は、どう考えても
さらりと流せるような事ではなかった。だが、当のアルマはほんの少しの間の後に

「…結果からすると…しくじった、のですね。お父様」
「そうなるね。…しかし、落ち着いているね。正直予想外ではあったよ」

父のその言葉にくすくすと目を細めながら笑みを零すと、自分で緑茶のお代わりを注いで…

「だって、自分の大切な人――父の顔と、その後母の顔を見て――が、あんな目にあっていたら
 手を下したくもなりますわ。正直に言うと、私が同じ立場だとしたら同じ事を考えると思いますから」

どうという事も無さそうな様子で言葉を紡いだ後、ずずー、とおアルマがお茶を啜った
そして、その言葉を受け、父は何かを考えるように目を閉じ、再び開いて…

「…そうか。そう言って貰えると気が楽になるよ。…とても、ね」
「あ、でも一つ気になることがあるんですの。お父様」

深く深く、臓腑の奥から吐いたかのような深い安堵の吐息を零す父
しかし娘の問いかけに、珍しく目をびく、とキョドらせるように瞬かせながら顔を向けた

「私は、何時から私になったのですか?あのテープに映っていたのが
 只時間が経って成長して私になりました、とは思えないのです。どうしても」
「ああ…そう、それだ。簡単に言うと、しくじった私の行為が功を奏したというか…
 私は、お前を殺した後もう一度子を作ろうと思った。その為には殺人ではなく
 お前に事故で死んで貰う必要があった」

母は何も言わず、只二人の会話へと静かに耳を傾けていた
娘もまた、必要以上に口は開かず、だが煎餅を遠慮せず食べた。茶も呷った。

「はい。それも最もです。それに先ほどと同じになりますけれど、私もそうしたと思いますから」
「…すまないね。それで私は…魔法を使った。星をね、お前に降らせたんだよ、アルマ」
「……自在に操れるとなれば、人一人でSOLレーザーの真似事が出来ますわね
 確かに、そんな側面もあるのであれば一子相伝かつ口伝のみも頷けますわ…」
「所が、やはり私も落ち着いているのとは程遠かったのだろうね。星は小さく…お前の頭に入り込んだ」
「………頭に、ですか?」

自分の頭をぺふ、と触るアルマ。だが、あからさまな傷跡らしきものは見当たらない

「脳の奥に食い込んでね、とても手術では取り出せないといわれたよ」
「それで即死したり、感染症を起こさなかったのは…星の導きでしょうね」
「……それから、どうなったんですか?」

父のカップが空になったのを眼にしたアルマが、そんな問いかけの言葉と共に紅茶を注いだ
白いカップに満ちてゆく琥珀色の液体を眺めながら、再び父が口を開く

「一週間後だったかな。目を覚ましたのは。だが、何をやっても反応しなくてね
 正直、最悪の結果になったと頭を抱えたよ。娘を手にかけようとした罪も含め、途方に暮れたよ」
「それから三日目でしたか。急に貴女は口を開いたのよ
「「おはようおかあさん。おなかすいた」ってね」

初めて聞く自分のそんな状態での話を、目を軽くぱちくりさせながら聞くアルマ
戸惑っている様子には見えないそれを視界に納めながら、父母の話は続く

「私たちはびっくりしたよ。今まで幼児レベルだったのに、いきなりだったからね
 もしかしたら今なら色々、砂地が水を吸うように覚えてくれるかと思って試しに本を読ませたら…」
「二時間で読み終えて、感想まで返ってきたのには驚きましたわね。本当に」
「……何があったんでしょう?私の頭の中で」
「…さあ、それは私たちにも解らない。何せ医師のコメントも「原因不明」だったからね」
「それが、あのビデオを見せる三日前のことよ、アルマ」

んー、とカップを手にしたまま首を捻り、断片的だった情報を糸で縫うように頭で繋げて行く
核心そのものの情報が相次いで寄せられたため、謎の殆どは氷解した、が…

「それで…その後は、どうなったんでしょう?」
「アルマ、一時期まるでビデオの早送りのような生活をしていた記憶は無いかな?」
「……一日の殆どを、お父様とお母様とお師匠様のどれかと接していた記憶は…ぼんやりと」
「あれは事実なんですよアルマ。あの頃の貴女は教えれば即覚えたものですから
 三人で付きっ切りになって常識や礼儀作法、学問に剣術…と文字通り詰め込んだのですよ」
「正直、一日21時間ぐらい…だったかな?」
「日によって前後はありましたが、概ねそのようなものであったと記憶していますわ。あなた」

「…なるほど。そんな風にびしびし教えていただいたお陰で…今の私があるんですのね」
「正にええと…紆余曲折だったかな?本当に長い回り道だったが、良い娘を得たと思っているよ」
「私もですよ。それに、高い所のものを取って貰えて楽ですから」
「お母様、私は高枝切り挟みか脚立の代わりですか?酷いですわー♪」


大よそ、のんびりお茶を啜りながら語るようなことではないのかもしれない
だが、本人たちが良ければ、それでいいのである。


「ちなみに…その割にはシーザの勉強が中々頭に入らないのですが…」
「丁度三ヶ月ぐらいで急激に低下して…普通レベルになりましたよね。あなた」
「ああ、そうだね。黄金のワンシーズンとでも言うべきかな。あれは」

「そこだけは続いて欲しかったですわ――――」

そんな娘の呟きに、父も母も、目を細め楽しげに笑みを浮かべるのだった
おしまい
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